イップスになったことによって、競技人生を諦める時代はもう終わりました。
症状のサンプルや治療法が増えてきており、イップスを克服できた人も少なくありません。
この記事では、イップスの原因と具体的な症状、7つの治療法について解説していきます。
この記事を読むことによって、あなたに合ったイップスの治療法を見つけることができます。イップスで競技人生を諦めてしまう前に是非、最後までお読みください。
そもそもイップスとは何か?
イップスとは、今まで何不自由なく出来ていた事が何かしらの原因によって突然出来なくなってしまう症状のことです。
イップスという言葉自体は元々ゴルフ関係者の間で使われていました。
主にスポーツの動作に現れることが多く、その症状は様々で、度合いも異なります。
深刻な症状の場合、選手生命が絶たれてしまうことも珍しくはありません。
そんなイップスですが、西洋医学においても未だ厳密に原因や症状が解明されていません。
脳と神経回路の異常だとされています。また、医学においてはイップスと呼ばず、ジストニアと呼びますが種類はほとんど同じです。
イップスになる原因
イップスになってしまう原因は人それぞれですが、同じスポーツにおいて似たケースがあることは多くあります。
逆に、異なるスポーツ間では打つ、投げる、蹴る、投げるなど動作と使用する道具の違いがあることから、イップスの症状を比較することはかなり難しいです。
しかし、発症の原因となったシチュエーションに焦点を当てると大きく2つの種類に分けることができます。
あなたのイップスの原因はどちらのタイプでしょうか。自身の経験と照らし合わせながら見ていってください。
プレイ中における極度の緊張
イップスの原因として1番多く言われているのが、プレイ中における極度の緊張です。
誰もが感じたことがある緊張であってもイップスの発症に繋がります。
原因の具体的な例としては、下記の4つが挙げられます。
- 指導者によるプレッシャー
- 試合終盤や得点のチャンスなどの状況からくる緊張
- パフォーマンスが悪い日
- 初めての試合など未経験の緊張
重要な場面での失敗体験
試合中の失敗体験が原因になってしまう人も多くいます。
こちらもたくさんの人が経験したことがあるでしょう。
原因の具体的な例としては、下記の4つが挙げられます。
- 試合中に自分のミスで他人をケガさせてしまう
- 勝利目前でイージーミスをしてしまう
- 無意識で簡単にできていたことが分からなくなってしまう
- 自身が試合中に大ケガをしてしまう
イップスの具体的な症状例
イップスはゴルフ、野球など様々なスポーツの選手に発症します。
症状や度合いは人それぞれですが、スポーツごとにある程度似通った症状が出ているので、あなたのやっているスポーツの例は特に参考になるはずです。
ここからは代表的なプロスポーツ選手達に現れてしまったイップスの症状を解説します。
イチロー(野球:投手としての投球動作)
日本が誇る野球界のスーパースターであるイチローさんも、高校時代にイップスを発症したそうです。テレビ番組にて稲葉篤紀さんとの対談で話をしていました。
その番組内でも話しているように、投手として投げることができなくなってしまったそうです。
症状がかなり深刻で、プロになれないかもしれないと考えたという話もあります。
イップスの症状によって投手から外野手に転向せざるを得ず、外野手としてプロ野球選手になりました。
プロ入り後は高校時代よりも症状が治まってきていたものの、数年間にわたってイップスの後遺症に悩まされていたといいます。
宮里藍(ゴルフ:パッティング)
米ツアーで10年以上に渡って活躍したプロゴルファーの宮里藍さんもイップスに悩まされました。
長期間愛用していたパターが壊れてしまったことを機に新しいパターに替えたところ、パッティングの感覚がおかしくなったそうです。
パットのインパクトの瞬間に恐怖を覚えるようになったことでイップスを発症し、思ったようなパットが打てなくなってしまったとのこと。
その後はイージーパットですら思うように入らなくなり、世界屈指のパット精度の高さで勝負していた宮里さんは成績を大きく落としてしまうことになりました。
引退会見でも自身がパターのイップスであることを告白しています。
ギリェルモ・コリア(テニス:サービス)
テニスをやっている方によく知られているのはギリェルモ・コリアさんでしょう。
コリアさんはサービスの際のトスがあげられなくなってしまいました。
イップスの発症から10位だった世界ランキングが3桁台まで急降下してしまいました。
テニスにおいてサービスの重要度は非常に高く、基本的に自分がサーバーのゲームは取らなければなりません。
よってサーブをイップスによって思うように出せなくなってしまうことは致命的だと言えます。
フィジカルにも恵まれていなかったコリアさんは、出せなくなったサービスを他で補うことができず、目立った成績を残すことなく引退してしまいました。
イップスになるだけで選手生命が絶たれてしまうことも十分にありえる話なのです。
坂本竜介(卓球:サービス)
最後は、テレビ番組「消えた天才」で、オリンピック金メダリストの水谷隼選手が勝てなかった人物として紹介されていた坂本竜介さんです。
人気番組なので、ご覧になられた方も多いのではないでしょうか。
この番組内において、なぜ天才だった坂本さんが消えてしまったのかという問いの答えとして語られていたのは、サービスのイップスでした。
いち早くヨーロッパの流行であったバックハンド技術を取り入れ日本卓球界に革命を起こしたり、水谷選手に天才と言わしめるほどの才能を持ちながらも、得意のサービスをイップスが原因で出せなくなったことにより、思うような成績を残すことができないまま引退してしまいました。
メダリストが感服する才能さえもイップスは潰してしまうのです。
イップスの治療法
イップスの治療法には大きく分けて西洋医学、東洋医学、心理学の3つの観点によるものがあります。
自分にとってベストな治療法を見つけることが1番ですが、1つに絞らないといけないということもありません。
それぞれの治療法は大きく異なったものですが、裏を返せばそれだけ選択肢があると言えます。
ここからはそれぞれの観点による治療法について詳しく見ていきましょう。
西洋医学
西洋医学とは日本においてのいわゆる医学のことです。基本病院で受ける治療は西洋医学からきているものです。
西洋医学においてはイップスという定義がありませんが、類似している症状にジストニアがあります。
ジストニアは精神科、脳神経内科・外科で治療が受けられます。
この記事ではジストニアの治療法を取り上げます。
薬物治療
その名の通り、薬物を用いて症状を緩和させる治療です。パーキンソン病の治療薬としても使われている「抗コリン剤」やてんかんの治療薬の「抗てんかん薬」等を使用します。
どの薬も無意識な筋肉の収縮を抑えるために、筋肉の弛緩を促します。
ただし、イップスの原因である脳や神経に影響を与えるものではないため、根本的な治療にはなりません。
対症療法に近いものと捉えてください。
他の病気でも広く使用されている薬なので、副作用や後遺症のリスクはかなり低いと言えるでしょう。
TMS治療(磁気刺激治療)
TMS治療( Transcranial Magnetic Stimulation)は、頭蓋骨を通して磁気的な刺激を送り、磁気の変化によって脳細胞の活性化を促すことで治療効果を得ようとする治療法です。
脳の機能が低下することによって起こると考えられている、パーキンソン病やうつ病に対して有効な為、イップスに対する治療効果が期待されています。
薬物治療と比べて副作用が少なく、痛みもほとんどないため(個人差あり)比較的受けやすい治療であると言えます。
しかし、効果を得るためには毎日治療を受ける必要があることに加え、保険適用外の治療なので医療費がかさみます。
また、磁気を利用する都合上、ペースメーカーをつけている方など物理的に受けることができない方も存在します。
定位脳手術
定位脳手術は、症状の原因となっている脳細胞を働かなくするように破壊したり、電気刺激を与えて脳細胞を活性化させたりする治療法です。
ジストニアは脳が原因なので、症状の原因部分を調べ、定位脳手術によって処置をします。
根本から治療することになるので、症状の消失が期待できます。
東洋医学
東洋医学は古くから中国に伝わる伝統的医学です。
西洋医学は病原に対して治療を行うのに対し、東洋医学は体全体のバランスを大事にします。
イップスは東洋医学において、心と体の全体のバランスが不安定になることにより出てしまう症状とされています。
東洋医学には漢方薬、鍼灸治療、薬膳、按摩などがありますが、この記事では漢方薬と鍼灸治療について解説します。
漢方薬
漢方薬は東洋医学で用いられる薬で、複数の効果がある成分をあまり加工をせずに調合したものです。
様々な種類がある漢方薬の中でも、緊張感を緩和させる作用のあるものが有用だとされています。
東洋医学における肝をいたわり、回復させることが治療方針です。
肝は精神と感情を安定させる役割を持っているとされており、精神的ストレスによって肝の調子が悪くなってしまいます。
そうなってしまうと、気持ちが乱れ、感情の制御が難しくなってしまい、イップスに繋がってしまいます。
イップスの根本的な原因に対する治療ができるので、症状改善の効果が期待できます。
鍼灸治療
鍼灸治療は、ツボに細い針を刺したり、艾(もぐさ)を燃焼させたりすることにより、体に刺激を与えて元々の自然治癒力を高める治療法です。
イップスにおいては、鍼灸を用いて筋肉の緊張をほぐして体全体の筋肉がバランスよくほぐれるようにしていくことが治療方針です。
また、ケガをかばうことによりイップスになってしまっている場合には、ケガをした部位周辺に対して痛みを和らげるような処置をします。
こちらは筋肉の緊張に対してのアプローチなので、根本の治療というよりは対症療法に近いと言えるでしょう。
心理学
心理学は医学と違い、人の感情と行動の科学です。
心理学においてイップスは、指導者の叱責からくる恐怖などのネガティブな感情によって発症すると言われています。
西洋医学が脳に対するアプローチをしていくのに対し、心理学では心に対してアプローチをします。
なので、メンタルケアが主な治療です。
イップスの原因であるネガティブな感情を抑え、感情をコントロールできるようにしていく心理学の治療法を解説します。
メンタルトレーニング
メンタルトレーニングは元々極限状態での勤務を行う宇宙飛行士向けに開発されたもので、近年ではスポーツ選手にも行われるようになってきています。
メンタルトレーニングの基本方針は、緊張とプレッシャーをコントロールし、感情を制御できるようにすることです。
治療自体はカウンセリングに近く、メンタルトレーナーと対話によって緊張する原因の解明やその人に会ったメンタルコントロールの仕方をアドバイスしてもらう事が出来ます。
イップスの症状が出ない状況でも比較的緊張してしまう方などにぴったりの治療法です。
カウンセリング
カウンセリングはカウンセラーとの面談を通じて、悩み事を解決していく治療法です。
カウンセラーは基本相談者に対して共感してくれるため、メンタルを前向きにしてもらえたり、相談者自身が面談を通して頭の中を整理できるよう誘導してもらえます。
イップスになってしまうと、普段元気な人でも精神的に追い詰められてしまう場合が多いです。
カウンセリング自体が体の機能に影響を与えるものではないため、副作用のリスクはほぼ皆無と言えます。
イップスで困ったらとりあえずカウンセリングを受けてみるというのは非常に効果的です。
まとめ
今回はイップスの症状と原因、治療法についてまとめました。
この記事を通して、イップスで諦める必要は全くないことをわかっていただけたと思います。
あなたに合った治療法を見つけてイップスを克服し、楽しい競技人生を謳歌されることを願っています。
コメント